君を想う【実話】
「約束守れよ?」
智也は笑顔で、瑠奈の頭をクシャッと撫でた
「..仕事頑張ってね」
"約束"
その言葉から逃げるように、瑠奈も笑顔を作る
「..じゃぁな」
「うん..ばいばい」
"またね"
それが、当たり前だったのに..
智也が、瑠奈に背を向けて足を止めた
「..忘れもんしたわ」
「え?」
振り返った智也の手が、瑠奈の後頭部を引き寄せる
チュッ―
目を閉じる暇なく、重なった唇
唇を離すと、智也は瑠奈に背を向けて歩き出した
もう、振り返ることはない―
智也の大きな背中が、段々と小さくなっていく
「ぅ..っ..」
涙が溢れそうになるのを必死に堪える
ブォンッ―
静かな住宅街に、バイクのエンジン音が響き渡った
ブォーンッ―
離れていくその音に、堪えきれずに涙が頬を伝う
「なんで..」
なんで最後に、あんな優しいキスするの..
瑠奈は、声をあげて泣いた
まだ唇に残る、優しいぬくもりを感じながら..