君を想う【実話】
「おい、なにやってんだよ!?」
仕事から帰ってきたお兄ちゃんが、泣き崩れる瑠奈を見つけた
何かを察したお兄ちゃんは、瑠奈を肩にかついで家に入る
いつの間にか雨がふってきたみたいで、お兄ちゃんの肩は濡れていた
「..ゆっくり眠れ」
瑠奈を部屋のベッドに寝かせると、お兄ちゃんは何も聞かずに出ていった
ありがとう、心の中で呟いた
顔を埋めた枕から香る、智也の匂い
涙を拭う手首に残る、悲しい傷跡
近くにあった剃刀で、傷跡を思いきり切った
ドクドクと脈をうち、流れる血が、生きている証拠
死ぬつもりなんてない
命の重みは、痛いほどに知っている..
悲しみを
弱い心を
消し去りたかった
"別れ"が正しいのかなんてわからない
正しい答えなんて誰も知らない
きっと、そんなもの存在しない..
ただ―
智也を傷つけたり、苦しめたり、悲しませたりするのは
誰であろうと、許さない
例え、それが..
自分であっても―..
瑠奈は、この運命と共に
生きていく..