君を想う【実話】
「瑠奈の本音は、どうなんだよ?」
しばらくの沈黙の後、雅也が少し遠慮がちに、口を開いた
「一緒に..いたかったよ」
こんなこと、瑠奈が言える言葉じゃないけど..
「でも、智也を苦しめるわけにはいかないから..」
月に手を伸ばして、目を閉じてみる
鮮明に浮かび上がるのは
瞼の裏に焼き付いた、智也の笑顔
結局は、前みたいに、別れが智也を一番苦しめたのかもしれない
それでも
離れてしまえばいつかは傷跡も癒える..
一緒にいれば、一生その傷を背負わすことになる..
「そっか..智也は、何て言ってた?」
「別れる理由は、言わなかったんだ。でも、智也は納得してくれたよ」
雅也に心配をかけないように、できるだけ明るく話した
涙を流しているのが、バレないように..
「..別れる理由?」
雅也の声色が再び変わると同時に、眉間にしわを寄せている様子が想像できた
「もしかして..お前..」
心なしか、震えてるようにも感じるその声
悪戯のようにすれ違っていた、二人の会話
最初に気付いたのは
雅也だった―