君を想う【実話】
「最近さぁ―..」
しんみりした空気を壊して、瑠奈は、一人で喋り続けた
"帰ろう"
その言葉を言われるのが怖くて..
もうすぐ
この時間が、終わってしまう―
「..瑠奈」
「え?」
智也が、少し目を細めて、瑠奈の後ろを指さした
きっと、眩しいほどに美しい朝日が顔を出していたのだろう
でも..
瑠奈は見れなかった
朝日を浴びた
智也の顔が
あまりに綺麗すぎて―..
「あの時と同じだな..すげぇ綺麗」
智也の手が、瑠奈の頬に触れた
「瑠奈、俺っ―..」
ザァッ―
その時、朝の爽やかな風が、二人を包んだ
どちらともなく
自然と重ねあった唇
ねぇ、智也
あの時、風が包んだ言葉
ちゃんと、聞こえてたよ..
唇を離して、智也は瑠奈を強く..優しく抱き締めた
暖かいぬくもり..
あなたは
あの時
泣いていましたか?―