君を想う【実話】





ガチャッ―





「送るよ」




車をその場に止めたまま、二人は外へ出た




眩しい日差しが、やけに懐かしく感じる




「ありがと..」




瑠奈は、智也の一歩後ろを歩いた





目を閉じても、瞼の裏には智也の姿..












瑠奈より30センチは、高い身長に



細身だけど、しっかりと鍛えられた体




透けるような淡い茶色の柔らかな髪に



少し伸びた襟足




長いまつ毛に



大きくて力強い瞳




筋の通った高い鼻に



アヒルっぽい口




整った顔立ちなのに



笑うとクシャッと崩れて..






智也の全てが―





智也の存在が―





瑠奈の心を




埋めつくす..







自から告げた別れに





後悔しても





もう、遅いのに..








「愛してるよ..」





智也の背中に、消えそうなくらい小さな声で呟いた




涙でぼやけていく背中が、悲しくて..





手を伸ばせば届く距離なのに




それができない..







< 422 / 436 >

この作品をシェア

pagetop