君を想う【実話】
ガチャッ―
「送るよ」
車をその場に止めたまま、二人は外へ出た
眩しい日差しが、やけに懐かしく感じる
「ありがと..」
瑠奈は、智也の一歩後ろを歩いた
目を閉じても、瞼の裏には智也の姿..
‥
瑠奈より30センチは、高い身長に
細身だけど、しっかりと鍛えられた体
透けるような淡い茶色の柔らかな髪に
少し伸びた襟足
長いまつ毛に
大きくて力強い瞳
筋の通った高い鼻に
アヒルっぽい口
整った顔立ちなのに
笑うとクシャッと崩れて..
智也の全てが―
智也の存在が―
瑠奈の心を
埋めつくす..
自から告げた別れに
後悔しても
もう、遅いのに..
「愛してるよ..」
智也の背中に、消えそうなくらい小さな声で呟いた
涙でぼやけていく背中が、悲しくて..
手を伸ばせば届く距離なのに
それができない..