THE 番外編。
「…もう、いい…、です。」
力を振り絞って出した言葉は、酷く小さく、震えていた。
『え…?』
「もう、いい…」
怖くて、先生の顔を直接見ることができない。
こんな小さなことでいちいち不安がって、泣きそうになっている自分が情けなく思えた。
『えっ、茉子ちゃん!?』
自分が惨めに思えた瞬間、気付けば私はその場から走り去っていた。
衝動のまま、先生のマンションを飛び出したとき、全身の力がフッと抜けていった。
私――…本当は、違ったんだ。
先生のこと、わかってたけど、違ったんだ。
私自身は、先生と、恋人として、クリスマスを過ごしたくて。
たまらなくて。
だから、先生に内密にクリスマスケーキも買って。
でも、そんなの買っていったら、先生に嘲笑われそうで。
プレゼントも用意できなかったのに、ケーキさえ本人に渡せないくらい小心者のくせに、いざ先生がクリスマスのことを忘れていることが分かったら勝手に傷ついたりして。
「…ばっかみたい……っ」
涙で滲んだ視界の中で見た、街のイルミネーションは、数時間前よりも眩しく見えた。