THE 番外編。



イルミネーションで彩られた街中を楽しそうに歩いていく、幸せそうなカップルたちが目に入って顔を俯いたその時。


『――本当にバカだな、茉子は。』

「っ!?」


後ろから聞こえた低い声に、私は引き寄せられるように顔を上げた。

振り返ろうとする前に、背後から体を包まれる。

抱きしめられている、と気付いた時には、何故か私の瞳からは堪え切れなかった涙が流れていた。


『何、俺のいないとこで泣きそうになってんの。』

「……っ」


ああ、先生の声だ。

オネェ口調じゃない、本性の工藤 蓮の声に、私は酷く安心した。


先生が…追いかけてきてくれた。

寒いのが嫌いで、冬はいつもより数段、家に引きこもって、コンビニさえ行きたがらない先生が、私を追いかけてきてくれた。


それだけで、うれしくて。

私はまだ、先生を動かす何かを持っているんだということが、うれしくて。


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