THE 番外編。



「どうして…」

『――何。』

「どうして、ここに…」

『バカ、それくらい察しろよ。』


こんな街のど真ん中で、背後から抱きしめられているなんて、いつもの私だったらすぐに離れようとするはずなのに、この時ばかりは、むしろ先生に抱きしめられているその瞬間が心地よくて。


『自分の好きな人が、今にも泣きそうな顔でどっか行ったら、誰だって追いかける。』

「……っ」


”自分の”

”好きな人”


このフレーズに、思わず瞳から、小さな涙がこぼれていく。


『クリスマス、ちゃんと俺と過ごしたいなら過ごしたいと、そう言え。』

「っ、だって…!先生、原稿が…!」

『ばーか。』


次の瞬間、私を抱きしめる大きな腕が離れ、ぐいっと強引な力で体を後ろ向きにされる。

直後、目の前にいた先生は、いつものオネェ口調で冗談しか言わないいつもの先生なんかではなく、いつの日か、私を口説いたあの時の先生の顔をしていた。



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