THE 番外編。
A Happy New Year 2016
身長差43センチのふたり。 編
――雛乃 Side――
『雛乃ー!テレビばっかり見とらんで、こっちば手伝ってー!』
2015年、大晦日。
通年通り私たち小日向家は、お母さんの短期有給と私とお兄ちゃんの冬休みに合わせて、年末年始、福岡に里帰りしていた。
お母さんの実家であるおばあちゃんの家のリビングで、おばあちゃんとぼーっと年末恒例の歌番組を見ていると、キッチンから私を呼ぶお母さんの声が聞こえた。
東京の我が家にはない、ぬくぬくとしたこたつから出るのが億劫だと思いながらも、私は言われた通りに、お母さんを手伝うためにキッチンへと向かった。
1年ぶりの福岡。
元旦は、毎年の恒例行事となっている太宰府天満宮の参拝、その翌日は、地元の親友である朱莉と久しぶりに会うことになっている。
お雑煮に餅つき、年越しそば、お年玉――…何かと楽しみなことが多い年末年始だけど、私にはただ一つ、気がかりなことがあった。
『もー、翔一はこうやって何も言わずに手伝ってくれるのに、雛乃ってば…。』
キッチンに入るなり、お母さんは小言をこぼす。
「む……いいやん、年末なんやし、ゆっくりしても。」
『雛乃はいつでも年末気分やろ?』
「そんなこと言ってると、戻るけどいいと?」
『あーはいはい、こっちの雑煮が滾(たぎ)らんか、見とって!』
リビングより少しだけ肌寒いキッチンで、私はため息を零しながら鍋の前に立った。