THE 番外編。
『ほら、食べよ食べよ。』
お母さんの合図で、皆がダイニングテーブルを囲むように座る。
さて、そばを食べよう、と手を合わせたその時、
♪~♪♪~~
ズボンのポケットに入れていた私の携帯電話が着信を告げた。
「あ……先に食べとって良かよ。」
いそいそとダイニングから出ていく私の背後で、3人がいただきますと言ったのを聞きつつ、廊下で携帯をポケットから取り出す。
こんな時間に、一体誰だろう…?
そんな疑問は、着信相手欄を見れば、すぐに消えていった。
――高遠 千尋
その名前を見たとき、私の心臓は正直に、ドクンッと波打った。
千尋と付き合い始めて、もう何日もたつけれど、千尋からの電話やメールが来ると、ドキドキしてしまうのは今も変わらなかった。
逸(はや)る気持ちを抑えて、私は通話ボタンを押す。
「――もしもし…?」
通話ボタンを押して、数秒後、小さな沈黙が長く感じられた。
『あ――…雛乃?』
「……っ」
冬休みに入ってもう6日。
クリスマスだって、福岡に里帰りする前日だって、千尋に会ったのに。
毎日、千尋とメールはしているのに。
3日ぶりの彼の声に、私の心はまた正直に高鳴ってしまう。