THE 番外編。



『ほら、食べよ食べよ。』


お母さんの合図で、皆がダイニングテーブルを囲むように座る。

さて、そばを食べよう、と手を合わせたその時、


♪~♪♪~~


ズボンのポケットに入れていた私の携帯電話が着信を告げた。


「あ……先に食べとって良かよ。」


いそいそとダイニングから出ていく私の背後で、3人がいただきますと言ったのを聞きつつ、廊下で携帯をポケットから取り出す。

こんな時間に、一体誰だろう…?

そんな疑問は、着信相手欄を見れば、すぐに消えていった。


――高遠 千尋


その名前を見たとき、私の心臓は正直に、ドクンッと波打った。

千尋と付き合い始めて、もう何日もたつけれど、千尋からの電話やメールが来ると、ドキドキしてしまうのは今も変わらなかった。

逸(はや)る気持ちを抑えて、私は通話ボタンを押す。


「――もしもし…?」


通話ボタンを押して、数秒後、小さな沈黙が長く感じられた。


『あ――…雛乃?』

「……っ」


冬休みに入ってもう6日。

クリスマスだって、福岡に里帰りする前日だって、千尋に会ったのに。

毎日、千尋とメールはしているのに。

3日ぶりの彼の声に、私の心はまた正直に高鳴ってしまう。


< 22 / 35 >

この作品をシェア

pagetop