秘密
「ん…」



直兄は、私の肩に顔を埋めた。



「シチュー、食べる?もう寝る?」

「食べたいけど、ちょっとだけにする」

「分かった。座ってて。」

「手伝うよ。」



直兄は、私の手からお玉を取って、シチューを盛り付けた。



直兄と夕食を食べるのは久々だった。



食事のときはあんまり話さない人だ。



だけど、黙々と完食してくれるから、安心する。



「ねえ、直兄」

「何?」

「お出かけ…行かない?」



ぼーっと、直兄の食べる姿を見ていたら、そんなことを話し出していた。



直兄のスプーンを動かす動きが止まる。



「お出かけ…母さんと?」

「ううん、それもいいけど、デート、したい。」



なんてこと言ってるんだろう。



私はきっと、直兄が久々に早く帰ってきて嬉しいんだ。



気持ちが高ぶってるんだ。



「いいよ。」

「ほんとに?!わーい」



あっさり、オッケーの返事を得た。



「明日行かない?休みだから」

「うん…行く」

「よし。眠いから、ふとんの中でどこ行くか、決めよう。」

「うん…!」



この言い回しは、一緒に寝るってことだ。



直兄は、こんな感じで時々一緒に寝てくれる。



お母さんには内緒で。
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