秘密

「これ、可愛い」



駅前のビルで、直兄と服屋さんを巡る。



立ち止まって見るワンピースは、どれも春らしくて可愛いものばっかりだった。



「直兄、退屈しない?」

「してないよ。」



直兄はたまに、店内のワンピースを手に取り、それと私を交互に見て、もともとあった場所に戻す。



「あんまり、ピンと来ない。」

「あ、直兄、待って」



直兄はいくら可愛いワンピースを見ても納得しなくて、店から店へとスタスタ行ってしまう。



このワンピース、可愛いのにな…。



ぼーっと直兄の背中を追いかけたら、



「わあっ」



急に直兄が立ち止まって、背中にぶつかってしまう。



「ちょっと、びっくりした!」

「このは」



直兄の視線の先を追ってみたら、それは、浴衣屋さんだった。
< 13 / 32 >

この作品をシェア

pagetop