秘密
「え、浴衣??」

「あの浴衣にしよう」



直兄はそう言ってスタスタ歩き出す。



あわてて浴衣屋さんに入ると、直兄が手に取った浴衣は、白色に小花柄のついた、上品なものだった。



「これ、絶対似合うよ」

「え…」




浴衣を私に差し出した直兄は、にこっと微笑んだ。



浴衣より、オレンジ色の照明に照らされた、直兄の甘い笑顔に見いってしまった。



「これ…?」



「御試着いかがですか?」



ぼーっとしてたら、店員さんにそう話しかけられた。



「お願いします。」



直兄がそう言って、



「はい!どうぞこちらに!」

「え、あ、ちょっと…」



張り切った様子の店員さんに連れていかれてしまった。



「この浴衣、可愛いですよねー」

「は、はい…」
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