秘密
店員さんと試着室に入り、てきぱきと着付けられていく。



「彼氏さんですか?」

「え、あ、兄です!」



とっさにそう答えた。



正しい答えなんだけど…。



「そうですか~。仲がいいんですね!」

「は、はい」

「はい、できましたよ」



鏡を見ると、私じゃないみたいだった。



似合ってるとか、そういうんじゃなくて、すべてが新鮮だった。



「せっかくだから、髪もまとめてみましょうか?」

「あ、はい…」



今度は椅子に座り、長い髪を後ろにまとめてもらった。



なんて、親切な浴衣屋さんなんだろ…。



直兄、どんな反応するかな。



ドキドキしながら、鏡の自分を直視できないでいた。


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