秘密



「直兄…」



試着室の扉をそっと開けて、小さい声で直兄を呼んだ。



「どう、かな…?」



直兄は、私の姿を爪先から頭のてっぺんまで見つめた。



体が熱くなった。



何も言わないから、さすがに耐えられなくなって、声をかけようとしたとき、




「きれいだよ。」



「へ…」




直兄のひとことが、耳の中でこだまする。



きれい。なんて、初めて、言われた…。



「このまま、買って帰ってもいいですか?」



「はい、大丈夫ですよ」



ん?

直兄、何言ってるの?



このままって、まさか、着て帰るとか…。



予想は的中した。



直兄はレジに向かい、私は、さっきの店員さんに下駄を履かされた。



「やっぱり、彼氏さんじゃないですか。照れなくていいのに~」



店員さんにそんなことを言われた。



顔が真っ赤になるのが分かった。



だって、直兄が、きれい、なんて言うから…。



「このは、行くよ。」

「あ、う、うん…」

「ありがとうございました!」
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