秘密

私の初めては全部、直兄だった。

「このは」

「直兄…」

見つめ合って、名前を呼びあったり、

抱き合ったり、キスしたり。

私は、直兄に対する気持ちしか知らなかった。

中学生になったころ、直兄が、お母さんがいる前で私を抱き締めないことに気がついた。

外で手を繋ぐこともなくなった。

直兄に嫌われたのかと思った。

「直兄、なんで外だとだめなの?」

直兄の部屋で抱きしめられながら、そう尋ねたら、

「秘密、だから」

切なそうな声でそう言った。


『ねえねえ、好きな人、言い合おうよ!』

『私、ヒロ先輩のこと好きなの!』

『ヒロ先輩、かっこいいよね!このはちゃんは?』

『え、わたし…?』

秘密。

私は、その言葉の重大さを、大きくなるにつれて理解していった。

『私はいないよ。好きな人。』

私はちゃんとそれを守り通した。
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