恋は死なない。




激しく降る大粒の雨に痛いくらいに打ち付けられたけれども、佳音は脇目も振らずに工房への道を走った。


とめどもない涙が、雨に溶けて流されていく。どんなに激しい雨にさらされても、佳音の唇に残る感覚は洗い流せなかった。


優しく触れ合った唇、心から愛しいと思う人とのキス――。
それは、佳音にとって生まれて初めてのキスだった。








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