恋は死なない。



「もう二度と、ここに来てはいけません。どうぞ、お幸せに」


そう言って和寿を送る佳音は、別れ際までとうとう微笑みさえ見せなかった。
すべての感情を押し殺したような表情の和寿は、その言葉にも何の反応も見せず、ゆっくりと背を向けた。

そして佳音は、和寿が階段を下りて見えなくなるまで、食い入るようにその姿を見つめ続け、今度こそしっかりと記憶の中に刻み付けた。


もう二度と、その目に映ることはないと、心に決めている和寿の姿を――。










< 137 / 273 >

この作品をシェア

pagetop