恋は死なない。
結婚式を終え新しい生活が始まると、和寿はきっと幸世とともに、二人ならではの愛を育んでいくに違いない。あんなに明るく笑っていられる幸世と一緒にいて、幸せになれないわけがない。
「こんにちはー!」
まさに今こそ、幸世がやって来てこの工房がパッと明るくなったように、いつも和寿の心を暖かく照らしてくれるはずだと、佳音は信じて疑わなかった。
「うわっ!?すごいわっ!!仮縫いの時のものとは全然違う!めちゃくちゃ綺麗よ!これ、ホントに私が考えたドレス?!」
出来上がったドレスと対面した幸世は、これ以上ないほどの感激ぶりだ。
その様子を窺って、佳音は胸をなでおろす。和寿との間にあったことを、幸世は何も知らないままのようだった。
「あらまあ、ドレスもかわいいけど、可愛らしい職人さんねぇ」
そう言って、幸世の隣でニコニコしながら佳音へと視線を送ってくれてるのは、一緒にドレスを受け取りに来た幸世の母親だ。
佳音は恐縮するように、はにかんだ微笑みを見せて、ペコリと頭を下げた。
「ご希望通りのドレスに出来上がっていればいいのですが、とりあえずご試着なさってみてください」
出来上がりのチェックを兼ねて、今日の試着は本番と同じく、佳音が合わせて作っておいたヴェールやグローブも身につけて行われた。メイクや髪は普段のものとはいえ、そこにいた花嫁は完璧といえるほどに綺麗だった。