恋は死なない。
「幸世、本当に綺麗よ。腕のいい職人さんに出会えて、よかったわね~。さ、これで、ドレスの準備は済んだわね。指輪はもう注文済みだし……あとは」
「あとは、招待状を発送して、披露宴の席順を考えたり、余興の段取りなんかもしなくちゃね」
ウェディングドレスで身を包んだ花嫁は、そう言いながら笑顔を輝かせた。
結婚式まで、あと二ヶ月あまり。予定通りに着々と、準備も進んでいるようだった。
「古川さんも一緒に来ればよかったのにね」
ドレスを脱ぎ始めた幸世に、母親がさも残念そうに投げかけた。
この本当に綺麗だった幸世の姿を、婚約者にも見せてあげたいと思ったのだろう。
「んー、誘ってみたんだけど、今日は平日だから会社は休めないって言ってた。ホントに、仕事のオニなんだから」
幸世が肩をすくめて呆れたように、そう言うのを聞いて、母親の方も、同意するように息を抜いた。
「確かに、古川さんはとても真面目な人ね。でも、パパが言ってたけど、古川さんって会社でもかなりモテてるらしいわよ」
「あら、そうなの?知らなかった!」
その事実は本当に意外だったらしく、幸世は目を丸くして母親を見つめる。
「古川さんはイケメンだもの。そりゃあ、モテるわよ」
「ええ?イケメンと言うには、ちょっと地味じゃない?」
見た目も性格も派手目な幸世からすると、和寿は地味目の普通の男に見えるらしい。