恋は死なない。
まだ、何の変化も感じられない自分のお腹を包み込むように、佳音は手を当ててじっと見つめた。意識もしないうちに、涙が幾粒もこぼれて落ちていた。
――……産んであげられなくて、ごめんね。……でも、私一人の力じゃ、どうしようもないの……。
暗いお腹の中だけしか知らずに消されてしまうなんて、何のためにこの子は息づいたのだろう……。
せっかく命を授かったのに、生まれてこれないなんて、なんて可哀想な命なんだろう……。
そんなふうに思うと、ますます涙が溢れて、止まらなくなる。
ぽたぽたと涙が落ちる自分の手の甲を見つめながら、佳音は、かつての自分がいつも考えていたことを思い出した。
『生まれてこなければ、よかった……。』
苦しくて、寂しくて、生きているのが辛い時、佳音自身、何度もその言葉をつぶやいていた。
同じ思いを、自分の子どもにはさせたくない。あんな思いをさせるくらいなら、この世に生み出さない方がいいとさえ思う。
家族の中で、本当の幸せを感じたことのない佳音は、自分一人の力でこの子を幸せにできる自信がなかった。