恋は死なない。
救いを求めて
それから佳音は、トボトボと歩いて駅へと向かった。これ以上、街をさまよい歩いてもどうにもならない。とりあえず、“自分の場所”へと戻る必要があった。
和寿のいる会社になど、行ってはならなかった。
あの一緒に過ごした夜の翌る朝、佳音は和寿を傷つけるようなことを言ってまで決別した。あの日から佳音と和寿は、別々の目的地へ向かって、それぞれの道を歩き始めている。
あの日以来、和寿が一切工房に姿を見せなくなったのも、彼の中で佳音のことは過去のこととして処理され、きちんと“けじめ”をつけているからに他ならない。
あんな大きな会社の社長になる人の、人生の邪魔になってはいけない……。
電車を待つ駅のホームの端に立ちすくんで、佳音は改めてそう思った。それは分かっていたはずなのに、馬鹿なことをしてしまった。
深い後悔と、報われない和寿への想いと、父親の愛を得られないお腹の子の境遇と……。
それらが佳音の中に繰り返し絶え間なく浮かんできて、涙が止めどもなく流れては落ちた。
哀しみとも苦しみとも説明のつかない感覚が充満して、もう窒息してしまいそうだ。こんな感覚に苛まれながら生きていかねばならないなんて、佳音には耐えられないと思った。