恋は死なない。
「……仕事といっても、特に用事はないんですけど……」
真琴の誘いに対しても歯切れの悪い受け答えをする佳音に、子どもたちが背中を押した。
「佳音ねえちゃん!泊まっていきなよ」
「そうだよ。外はもう暗いよ?」
「泊まって、泊まって!」
今度は佳音が、先ほどの古庄のように、三人の子どもたちからまとわりつかれた。その力強い押しに、佳音もうなずかざるを得なくなる。
「うん……。それじゃ、お願いします……」
「やったーっ!!」
たったそれだけのことで、子どもたちはリビングを走り回って、狂喜乱舞している。古庄も、佳音がそう答えるのを聞いて、満足そうに微笑んだ。
その得も言われぬ表情に、佳音の胸がドキンとまた一つ鼓動を打つ。けれども、その鼓動の響き方が、以前と違うことに佳音は気がついた。
以前はこの笑顔を見ることはおろか、古庄の名前を思い出すだけで、遂げられなかった想いが古傷のように疼いていたのに、それが嘘のようになくなっていた。
それはきっと、和寿に恋をしたからだと思う。でも、佳音はやっと古庄の呪縛から抜け出せたのに、今まで以上の恋の苦しさを抱えなければならなかった。