恋は死なない。
「佳音ねえちゃん、どうしたの?食べなよ」
真琴から目を離せない佳音に、真和が声をかけた。佳音の視線を感じた真琴も、恥ずかしそうに笑いかける。
「いきなりこんなところ見せられて、ビックリしちゃった?四人目ともなれば感覚が鈍ってしまって、ごめんなさいね」
「家族だったら、気にすることはないさ。俺も、真琴のオッパイ見てもドキドキしなくなった」
大口で夕食を食べながら、古庄があっけらかんと言ってのける。すると、途端に真琴の顔が真っ赤になった。
「もう!子どもたちの前で、やめてください!」
真琴から諌められても、古庄は悪びれずにニヤリと笑い、佳音へ目配せする。相変わらずの二人のやり取りに、佳音もほのかに笑って古庄に応えた。
「さあ、森園も食べないと。冷めたら美味しくなくなる」
古庄から促されて、佳音も箸を手に取り、湯気の上がる味噌汁を一口すすった。
食卓を囲む賑やかで暖かい空気。古庄と真琴が九年の年月をかけて作り出した日常は、特別なものではなかったが、佳音が経験したことのないものだった。
食事が終わると、間髪いれずに古庄が上の二人の男の子を、順番に風呂に入れる。それから、遅れて食事をした真琴が、下の女の子二人と一緒に風呂に入る。
古庄は、まるで阿吽の呼吸のように動いて、次々と風呂から出てくる娘たちの湯上がりの世話を、甲斐甲斐しく行った。