恋は死なない。



きまりの悪い二人は、佳音に気の利いた言葉をかけることができず、真琴は泣いている円香のもとへ、古庄はキッチンでしていた片付け物の続きをし始めた。


「ん?オムツかな?……濡れてないね。それじゃ……」


真琴が円香を抱き上げると、円香は泣くのをピタッとやめた。可愛らしい目から落ちた涙の粒がまだ頬についているのに、ケロッとした顔をしている。


「すごい。泣きやんだ」


佳音が目を丸くして、その不思議を指摘した。すると、真琴は柔らかく笑う。


「目が覚めたのに、誰もいなくて寂しかったのよね。でも、赤ちゃんだけじゃなくて、それは誰でも同じよ。寂しさだけは、自分一人の力でどうにもできないもの」


自分の心を見透かされたような言葉に、佳音の胸がキュッときしんで、とても切なくなる。
できることなら赤ちゃんのように、すぐに助けてくれる人の存在を信じて、泣き出してしまいたいと思った。



「さあ、子どもたちも寝てくれたから、大人はゆっくりとお茶でも飲みましょうか。ちょっとこの子、抱いててくれる?」


そう言いながら真琴は、円香を古庄にではなく、佳音に預けた。
おっかなびっくり円香を抱く佳音に、古庄も声をかける。


「もう、かなりしっかりしてるから、大丈夫。お尻の下と背中を支えて」



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