恋は死なない。
「真琴の状況を考えると、難しいのは分かってるけど。愛する人との間に子どもが生まれることほど、素晴らしいことはないからね」
それを聞いて、佳音の息が止まった。先ほどの真琴の言葉と同様に、まるで佳音のことを見透かしているかのような言葉……。
佳音は、自分のお腹の中で息づく赤ちゃんの存在を感じながら、今腕の中にいる円香をじっと見つめた。
「森園も含めて、普段接している生徒はもちろん可愛いけど、自分の子どもはやっぱり特別なんだ。一つの人格の中に、俺と真琴がいろんなかたちで共存している。だから、可愛いというより、すごく不思議でかけがえがない。こんな『宝物』、もっとほしいと思って当然だろう?」
古庄の語る言葉が、何の疑問もなく佳音の中にすっと入り込んでくる。
――そう、『宝物』。和寿さんと私の命が溶け合った……。
そう思った瞬間、佳音の心の堰が一気に崩壊した。
円香を抱いたまま、佳音は突然、ポタポタと大粒の涙をこぼし始めた。