恋は死なない。
同じ境遇
ソーサーに載せた紅茶のカップを、佳音の前に置きながら、真琴が佳音の頬を伝う涙に目を止める。
向かい合う古庄は、それを想定していたらしく、その涙を見ても特に驚くことなく、じっと佳音の泣く様を見守っている。
「抱いててくれて、ありがとう……」
真琴が声をかけて、佳音の腕から円香を受け取った。そして、古庄もおもむろに口を開く。
「……どうした?なにがあった?なにか助けてほしいことがあって、ここへ来たんだろう?」
古庄の優しい響きを伴う言葉に、佳音の心が震えて、涙がもっと込み上げてくる。
「また……、『死にたい』なんて思ってるんじゃないだろうな?」
これまでも、佳音が寂しさや苦しさに挫けそうになって『死んでしまいたい』と思ったとき、古庄はいつでも佳音を励まし、立ち直らせてくれた。
でも、工房を持って独り立ちしたとき、心もきちんと自立して、古庄と真琴に頼るのはもうやめようと思っていたのに……。今はまたこうやって、小さな子どものように泣くことしかできない。
「困ったときに、私たちのことを思い出してくれて、本当に嬉しいの。話してくれたら、なにか力になれることがあると思うのよ?」
真琴からも諭されて、佳音はこの苦しさを吐き出したいと思うけれども、なにからどんなふうに切り出したらいいのか分からなかった。