恋は死なない。
「……私にウェディングドレスの依頼をしてきた女性と……、婚約をしている人です」
絞り出すように、佳音の口から語られたことの深刻さに、古庄も真琴も身につまされるように悲痛な表情を浮かべた。
佳音に対して、なんと言って言葉をかけていいのか分からず、沈黙が漂うなか、時間だけが流れていく。
でも、ただ黙っていても何も解決はしない。膠着した状態をなんとかしようと、真琴が沈黙を破った。
「その、好きになった彼は、このまま婚約者と結婚しようとしているの?佳音ちゃんのことは、どう考えてるの?」
真琴の問いに答えるかたちで、佳音もようやく口を開く。
「……彼は、なんとかして、ここに……、私の工房に『戻ってくる』と、言ってくれました」
「そう」
真琴は安心したように少し息を抜いて、表情を緩ませた。
「だけど私は、二度と来ないでと言いました。あなたは私には必要ないとも、言いました」
「相手は『なんとかする』って言ってるのに、なんでそんなこと言うんだ。相手のことが、そんなに泣くほど好きなんだろう?」
まるで理解できないといった口調で、古庄は思わず前のめりになる。心の中の真実を言い当てられて、佳音の瞳からは涙がとめどなく流れた。