恋は死なない。



「佳音ちゃんは、その人の花嫁になる人のウェディングドレスを作ってたんだから、罪悪感もあったのよね?ドレスには、『幸せになってほしい』っていう佳音ちゃんの真心が込められているんだもの」


佳音の心を推し量って、真琴がそれを代弁してくれる。


「それに……、花嫁さんは、一緒にいる人を楽しくさせるような、明るくて活発な人で、会社の重役の娘さんなんです。私なんかよりも彼女といた方が、あの人はきっと幸せになれるんです……」


佳音のこの言葉を聞いて、真琴はますます悲痛な表情を見せた。それから、古庄と目を合わせて、眼差しだけで会話をする。


「……佳音ちゃんの気持ちは、よく分かる。消えてなくなりたいくらい、切なくて辛いのよね?」


真琴の慰めに対して、佳音はうつむいたまま激しく首を振って、それを拒絶した。


「……ううん!賀川先生には分からない。古庄先生にこんなに愛されて、こんなに幸せな毎日を送ってる先生には、私の苦しさなんて分かりっこない!」


かえって自分が惨めに感じられてくるような、生半可な憐みなんてかけてほしくなかった。
そう言われてしまうと、真琴もかける言葉が見つけられず、悲しそうに目を伏せる。


「……いや。俺たちも同じような経験をしてる。だから、お前の境遇や気持ちは、まるでトレースしたみたいによく分かるんだ」


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