恋は死なない。
真琴の大げさな反応を見て、古庄も半信半疑で、ケーキの一片を口へ放り込む。
「○☆□×♨︎▲〜〜!!」
顔を赤くして青くして、古庄は辛うじてそれを飲み込んだ。
「……あいつら!!砂糖と塩を間違えて作りやがったな!」
佳音は悶絶する二人の反応を見て、それからケーキに再び目を落とした。
「こんなに美味しそうなのに……、食べられないなんて」
思わず口から出てきた佳音のつぶやきに、真琴がおかしそうに笑いをもらす。紅茶を飲んで口を直した古庄も、朗らかに笑った。つられて、腕にいた円香もキャッキャと笑い始める。
楽しそうな家族の様子を見て、佳音もほんのりと笑った。苦しさを乗り越えたからこそ、こうやって笑うことができるのなら、今の自分の苦しさも意味のあることなのかもしれない……。
そんなふうに思いながら、佳音は温かい紅茶のカップを両手で持ち上げて、ゆっくりと口に運んだ。
それから、佳音の工房の様子や生活の様子などの話を少しして、佳音は寝床へと案内された。
真琴がリビングへ戻ってくると、古庄は明かりを消してカーテンを開け、窓辺で秋の夜空に輝く月を眺めていた。
「あら?円香は?」
「抱っこしてたら、コロッと寝たよ」
真琴の問いかけに、古庄はベビーベッドを指し示しながら答える。