恋は死なない。
明るい花嫁
「こんにちはー!!」
明るい声が響いて、工房に幸世が入ってくる。
もう何度目かの来訪で、幸世にとってここは慣れた場所になっているようだ。
「わあ!ステキ!!もう、ドレスの形になってる!!」
幸世が工房の服飾用のマネキンに着せられているドレスを一目見るなり、感嘆の声をあげた。
「これは、仮縫い用の生地で作った、試作品です。今日はこれを着てもらって、直さなければならないところを見つけていきます」
この日は、仮縫い用のドレスが出来上がったので、幸世に試着してもらうという、とても大切な作業をする。
ここで、結婚式や披露宴の花嫁の動きを想定して、ドレスをチェックしていくのだ。
ブーケを持った時の、腕やデコルテの見え方。ウエストの位置やスカートのボリューム。一番美しく見えるように細部にわたって点検し、体に合わないシワやゆがみが出るところも、全てピンを使って整えていく。
佳音が入念なチェックをするのにはずいぶんな時間を要し、その間幸世は鏡の前でただじっとお人形になっていた。
それでも、自分の思い描いたドレスが形になって、初めてそれを身に着ける感激に、幸世の表情は嬉しそうに輝いていた。
花嫁さんのそんな顔を見るたびに、佳音はこの仕事をやっていて本当に良かったと思う。
自分の作るドレスが喜びを作り出すなんて、誇らしさと晴れやかさを感じて、この上ない充実感に心が満たされた。