恋は死なない。
「佳音ちゃんも……、今は本当につらいでしょうね……」
自分たちが歩んできた道と同じような境遇にいる佳音の心を想像して、真琴がその目に涙をためた。
「大丈夫。相手の男は、きっと森園のところに戻って来るよ。婚約者がいるのに他の人への想いを自覚することは、もう自分が止められないっていうことだ。それは俺が誰よりも知っているから」
古庄が確信を持ってそう言っても、佳音の状況を考えると、真琴はなかなか不安を拭えなかった。そんな真琴の髪を撫でながら、古庄は微笑んでみせる。
「『大丈夫』っていうのは、君の決まり文句だろ?森園もきっと、俺たちみたいに幸せになれるよ」
古庄が耳元で囁いたそれは、まるで祈りのように、真琴の心にいつまでも響いていた。