恋は死なない。
「私は……、仕事もあるし、もう帰ります」
この家を離れて、また一人きりになるのは怖い気もしたが、いつまでもここにいて迷惑をかけるわけにもいかなかった。
「ええーー!?お昼までは、家にいてよ!」
「そうだよ。お昼まで一緒に遊ぼうよ!」
男の子たちの引き留めに、佳音は躊躇してしまう。このままこの家の居心地の良さに浸ってしまうと、本当に帰れなくなってしまいそうだった。
「おねえちゃん、『おうちごっこ』しよ。琴ちゃん、オモチャかしてあげる」
昨晩、一緒に夕食の配膳の手伝いをしたこともあり、佳音は琴香に懐かれているらしい。小さく可愛らしい琴香からお願いされると、佳音も思わず頷いてしまう。
「仕事の方は大丈夫なの?子どもたちはこう言ってるけど、無理しないでね」
真琴が心配して覗き込んでくるので、佳音は肩をすくめた。
「夕方までに帰り着ければ、構いません」
それを聞いて、真琴は安心したように笑いかけてくれた。
「それじゃ、真和と彦真のラグビーの練習に行く前に、駅まで送っていってあげるわね」
それから、古庄は準備をして、佳音とろくに会話もできないまま慌ただしく家を出る。
子どもたちは佳音を交えて、“お家ごっこ”を始めた。この“お家”は特殊な家らしく、家族全員で料理を作る。真和は画用紙にクレヨンやハサミを持ち出してきて、凝った工作をしていた。