恋は死なない。
フォトスタンドをテーブルの上に置きなおして、真琴が答える。
「この写真のおねえちゃんは、佳音ちゃんよ。お母さんが着てるこのドレスは、佳音ちゃんが作ってくれたのよ」
「ええー!すごぉい!!琴ちゃんのも作ってほしい!!」
「うん。琴ちゃんがお嫁さんになるときは、作ってあげる。とってもかわいいドレスを」
佳音がそう言ってあげると、琴香は満足そうにニッコリと笑顔を見せて、テーブルの上にあるクッキーをひとつ取った。
「この写真を飾ってたんですか?」
佳音は目を上げて、真琴に確認した。結婚式のときの写真は、古庄と真琴だけの、もっときちんとしたものもあるはずだ。
佳音から指摘されて、真琴は琴香が家の中へと戻るのを見届けながら微笑んだ。
「結婚式を挙げてもらえたことも、もちろん嬉しかったけど、それよりも……、このとき、佳音ちゃんが中心となってこのドレスを作ってくれたって知って、本当に嬉しかったの。古庄先生のことをあんなに好きだったのに、こうやって祝福してくれて……。だから、この写真。」
この写真を見ていると、佳音もこの当時のことを思い出す。
祝福するという余裕のある感覚よりも、古庄への遂げられなかった恋情を昇華するために、ただ古庄と真琴に喜んでほしい、その一心だった。