恋は死なない。
唇を噛んで言いよどんでいた佳音は、やがて唇を震わせながら、その一言を絞り出した。
「……お腹の中に、赤ちゃんがいるんです……」
その事実を知って、真琴は目を見開いて佳音をさらに凝視し、佳音がここへ来た本当の理由はこれだったのだと覚った。
「昨日言ってた、好きな人との子どもなのね?」
「古庄先生には、言わないでください……!」
問いに答えることよりも、とっさに釘を刺してきた佳音に、真琴は表情を険しくさせる。
「佳音ちゃんがこのことを、古庄先生には知られたくないのは分からないでもないけど。これから赤ちゃんだって産まれてくる。いつまでも隠しておけないわ。古庄先生だって、きっと一緒に考えてくれる」
「それじゃ、まだ今は言わないで。古庄先生が知ってしまうと、前にお父さんを探して話を着けてくれたみたいに、あの人のところへ行ってしまうかもしれない。あの人のことを、困らせたくないの!」
佳音が必死な形相で懇願するのを聞いて、真琴は佳音を見つめたまま考えた。
中絶するつもりなら、ここでこうやってこの事実を告白などしないだろう。それだったら……。
「……一人で産んで、育てるつもりなの?」
真琴から確認されて、佳音は自分の前に待ち構えている苦難に目がくらみそうになる。だけど、この子を守るのは自分しかいない。