恋は死なない。



自分のことを親身になって心配してくれて、こうやって泣いてくれる真琴。そんな真琴に自分の気持ちを語ることで、佳音は心の整理ができたような気がした。
真琴の涙が心に沁みて、ようやく大切なことに気がついた。


なんの解決もしなくていい。どんなふうに悩んでも、結論は変わらない。答えは初めから、佳音の中にあった。


泣きながら、真琴は佳音に伝えたいことを見つけたのだろうか。涙を拭うと、佳音に向き直った。


「……でもね、これだけは言える。せっかく佳音ちゃんを選んで宿ってくれた命だから、なにがあってもその命を一番に考えなきゃね。辛いことがあっても、きっとその子の存在に救われる。必ず産んで良かったって、思うから」


佳音は、またゆっくりと頷いた。真琴の言葉が心に響いて、覚悟を決める。その眼差しを見て、真琴も佳音の変化を感じとった。


「でも、一人で育てていくのは、佳音ちゃんや私が想像している以上に、大変なんだと思う。だから、もし、その子のことを、……どうしても育てられないと思ったときは、なにも考えなくていいから、私に知らせてね」


テーブルの上に置かれた佳音の手の上に、自分の手を重ねて、念を押すように真琴は言葉を尽くした。


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