恋は死なない。
「うちの四人の子どもが五人に増えてもかまわないし、安心して産んでいいのよ?佳音ちゃんの赤ちゃんだから、きっとすごく可愛いわね。生まれるの、とても楽しみよ」
知らないうちに、佳音の瞳からまた涙がこぼれ落ちていた。お腹の子が生まれてくることを、こんなに祝福してくれるとは思わなかったから。胸がいっぱいになって、何も応えられなかった。
かつて恋い焦がれていた古庄が愛した人は、本当に澄んでいて、その清らかさは佳音の心に溜まっていた不安の澱をきれいに洗い流してくれた。
「お母さん、お腹すいたー!」
そのとき、次男の彦真がウッドデッキにやってきた。
「え?もう?それじゃ、少し早いけど、お昼ご飯にしましょうか」
まだ残る涙をごまかしながら、真琴が立ち上がる拍子に、彦真はそこにあったクッキーをひとつ口に放り込んだ。どちらかというと顔は真琴に似ている彦真の、そんな何気ない仕草の中に、古庄が潜んでいる。
佳音のお腹の中にいるこの子も、こんなふうに和寿の一部を受け継いでいるのだろうか?そして、その中に佳音の要素もあって、どんなふうに溶け合っているのだろう……。
佳音はこの時初めて、このお腹の子に早く会いたいと思った。本当に愛おしく感じて、生まれてきてくれることを待ち遠しく思えた。