恋は死なない。
午後になって、佳音は真琴に駅まで送ってもらった。
「バイバーイ!佳音ねえちゃん、バイバーイ!!」
「佳音ねえちゃん、また来てね――!!」
古庄家の子どもたちの賑やかな見送りの声が、いつまでも駅の構内に響いている。
佳音は恥ずかしそうに肩をすくめてから手を振って、電車に乗った。
自分の抱える悩みごとが、すべてなくなったわけではなかったけれど、佳音は一日前とはまるで違う気持ちで電車に揺られていた。
目に映る景色が流れていくのをただ眺めていると、心が穏やかになって透き通っていくようだった。
田園風景から家が建て込む風景へと移り変わって、街が近づいてくる。佳音が住む日常が戻ってきて、また一人だけの生活が始まる。佳音は先ほど固めた覚悟を思い出して、必死で自分を奮い立たせようとした。
するとそのとき、佳音の携帯電話が光り、メールの受信を知らせた。開いてみると、古庄からのメッセージ。
今朝、佳音とゆっくり話ができなかったことが、心残りだったのだろうか。こうやって古庄からメールを受け取るのは、初めてのことだった。
その文面を読んで、佳音は思わず唇を噛んだ。
古庄がまるでそこにいて、そう言ってくれているようだった。