恋は死なない。



『死んでしまいたいと思ったり、逃げ場がほしい時には、またいつでも俺の家へ来ればいい。なにかあったときには、いつでもお前のところへ駆け付けるから。
お前が高校生のとき、真琴のために作ってくれたウェディングドレス、本当にうれしかった。お前には、そうやって人の心を幸せにする力があるんだ。それを忘れちゃいけないし、誇りにするべきだ。
だから、お前も幸せになることをためらってはいけないよ。お前は不幸なんかじゃなくて、幸せになるのが下手なだけだ。なかなかうまくいかないのは、安易な幸せじゃなくて、本物を求めているからだ。
勇気を出して、心を開いてみてごらん。まだ何も終わっていない。これから始まるんだから』


古庄が懸命に訴えようとしてくれていることが、心に深く伝わってきて、体が震えた。
夕方の混み合った電車の中、溢れてくる涙を、他の乗客に気づかれないように、佳音はうつむいて何度も拭った。



古庄家に飾られていた、古庄と真琴と三人で撮った写真。本当の家族のように迎えてくれる古庄家の人々。あの温かさは、佳音の心を芯から癒してくれた。


でも、自分の居場所はあそこではない。
自分はまた別の場所で、別の幸せを見つけなければならない。


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