恋は死なない。
おじさんが渡された紙袋の中を覗くと、白い生地にレースが施された、まるでウェディングドレスのような小さなポーチが入っていた。
「余った材料で作ったものなんですけど、おじさんの使えそうなものは、思い浮かばなくって……」
恥ずかしそうに説明する佳音を見つめて、おじさんの顔がニッコリと笑みを帯びる。
「そりゃあ、俺がレースのついたポーチなんて使ってたら、気持ち悪いわな。おーい!母さん、来てごらん。佳音ちゃんからのプレゼントだ」
おじさんはそう言って笑いながら、店の奥にいた奥さんに声をかけた。
「あらまあ!これを私に?さすがに職人さんだから、こんなものを作るのも上手なのねぇ!」
奥さんもポーチを手に取って、嬉しそうにしてくれる。
「お前にこんな可愛いポーチなんて、まるで『豚に真珠』だけどな」
「なんですって?!私が豚なら、あんたはトドじゃないの!」
おじさんの突っ込みに、奥さんも楽しく反応した。佳音もその明るさにつられて、笑いをもらす。
「そうだ。お礼と言っちゃなんだけど。お茶、飲んでいって。ウェディングドレスのデザイナーって、どんなことしてるのか聞いてみたかったのよー」
と、奥さんからいきなりの誘いを受けて、佳音は固まってしまった。こんな時、動揺するあまり、いつもの佳音なら断ってしまっていた。