恋は死なない。



花屋の店主が真剣な目をして、身を乗り出してそう諭してくれる。


「そうだ!男だったら、きちんと責任は取らなきゃいかん!何なら俺がこれから、この古川とかいう男のところへ行って、話をつけてきてやる!!」


魚屋のおじさんはそう言うや否や、テーブルを叩いて立ち上がった。佳音は顔をこわばらせて、おじさんを見上げる。おじさんがこのまま和寿の会社に怒鳴り込んでしまうと、大変なことになって和寿を困らせてしまう。
すると、奥さんが血相を変えてそれを止めてくれた。


「何言ってるの!あんたが出て行ったら、話がいっそうややこしくなって、佳音ちゃんをもっと困らせることになるでしょうが!!」


いきり立っていたおじさんが辛うじて思いとどまってくれて、佳音は内心ホッとしながらおじさんに向き直った。


「ありがとうございます。そんなふうに私のことを庇ってくれて、本当に嬉しいです……」


丁寧に頭を下げる佳音に、おじさんはやるせなさそうに言葉を絞り出した。


「……でも、佳音ちゃん。本当にそれでいいのかよ……」


佳音は顔を上げて、おじさんと目を合わせる。


「古川さんは、ゆくゆくは社長になる予定だって聞いています。地道に努力を続けてきたからこそ拓けた未来なんです。だから、彼が迷わずにその未来で生きていけるように……。私とこのお腹の子は、彼の中で存在してはいけないんです」

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