恋は死なない。
手にあった紅茶のカップを飲みかけのままソーサーに戻して、幸世はあたふたと立ち上がった。
「試着に時間がかかってしまって、ご迷惑をおかけしました」
きっと幸世の想定していた試着の時間よりも、ずいぶん長引いてしまっていたのだろう。
玄関へ急ぐ幸世の背中に佳音が声をかけると、幸世はニッコリと微笑みながら振り向いた。
「迷惑だなんて。ドレスを作って頂くために大事なことなんでしょう?次の段取りは、またメールででも教えてください。素敵なドレスを、お願いしますね」
急いでいても、幸世はそう言ってきちんと佳音をねぎらってくれる。
一点の曇りもない明るい表情は、佳音の心を軽くしてくれたが、同時に佳音の目には少し眩しすぎた。