恋は死なない。
花束を携えて、折しも白いワンピースを着ている佳音が、上質なスーツを着こなす和寿と並ぶと、二人はまるで結婚式を挙げている花嫁と花婿のようだった。
写真に残されることもない、はかなく美しいその光景に、その場にいた三人は言葉もなく、ただ魅了された。
会釈をして再び歩き出した二人を見送って、花屋の店主が思わずポツリとこぼす。
「佳音ちゃんって、本当に可愛い……」
「俺が目をかけてんだから、当然だ」
そう応える魚屋のおじさんの目には、涙が光っている。
「……うちには娘はいないけど……、娘を嫁に出すって、こんな気持ちになるものなのかしらね」
魚屋の奥さんは、おじさんに寄り添って微笑んだ。
三人は、並んで歩く佳音と和寿の背中が見えなくなるまで、その場にたたずみ、再会の感動の余韻に浸っていた。