恋は死なない。
敢えて人との関わりを避け、ずっと独りで生き続けてきた佳音。そんな佳音の奥底にいつもあって、ずっと封印していた本当の気持ちが、涙とともに溢れ出てくる。
今こそ、誰かのためではなく自分のために、大事なものが通り過ぎていく前に勇気を出す時だと思った。
佳音は腕を伸ばして和寿の首に絡ませ、ギュッと和寿を抱きしめた。もう、今度こそ、和寿を失いたくなかった。
「……もう……、独りぼっちはイヤ……!」
涙声で絞り出されたこの一言に、込められた佳音の想い。それが胸に深く響いて、和寿の心も切なく震えた。独りぼっちで健気に生きてきた佳音が、愛おしくてたまらなかった。佳音の想いに応えるように、和寿も佳音を抱きしめる腕に力を込めた。
「君をもう決して一人にはしないよ。僕はどこにも行かない。ずっと君の側にいて、君を守るから。一緒に生きていこう。……二人で幸せになろう」
耳元で囁かれる和寿の誓いのような言葉を、佳音は目を閉じて胸の奥深くにしまい込む。
それから和寿の首に回していた腕をほどき、大切なことを告げるために、和寿を見上げてその目に視線を合わせた。
「……二人じゃないの。ここに……、もう一人いるから……」
和寿はすぐには意味が分からずに、佳音の目を見つめ返した。そして、佳音の手が『ここ』だと指し示す場所を確かめて、息を止めた。