恋は死なない。
「……そこに?……僕の、子ども?」
黙ったまま佳音がうなずくと、和寿は喜ぶよりも先に、切なそうに顔を歪ませて取り乱した。
「どうして、知らせてくれなかった?僕は君に連絡先を教えられないままだったけど、何か手段を使って……。このことを知ってたら、会社のことなんて放り出して、すぐに君のもとへ戻って来たのに」
両肩を掴まれて、和寿から訴えかけられて、佳音は涙を呑み込むように唇を噛んでから、口を開いた。
「あの日……、あんなふうにあなたと別れてしまってから、あなたは姿を見せてくれなくなって……。もう私のことなんて、忘れるつもりなんだって思ってたの……」
会えなかった時間、和寿は佳音との未来を心に描いて無我夢中の毎日を送っていたけれども、佳音はその未来も想像できず、どれだけ心細かったことだろう。
「……僕から何も連絡しなかったのは、悪かったと思ってるよ。でも、中途半端な状態のままだと、また君を迷わせて苦しめてしまうと思ったんだ……」
「私も、あなたを苦しめたくなかったの。あなたは、もうとっくに幸世さんと結婚していると思ってたから……。この子のことを知らせて、あなたを困らせたくなかったの……」
その言葉を聞きながら、佳音をじっと見つめる和寿の唇が震え、目には涙が滲んでくる。