恋は死なない。

 幸せの中で




和寿は浅い眠りから覚めて、自分の腕の中にいるはずの佳音がいないことに気がついた。
でも、昨夜、佳音を抱いたことは夢ではない。目に映っているこの場所は、佳音の工房の一部屋だ。


昨夜はあれからひとしきり愛し合った後、二人で簡単な夕食を作って食べ、順番に入浴して、再びベッドへと入った。最初は二人ともきちんとパジャマを着ていたのだが、和寿はやはり我慢が出来なくなった。

身重の佳音を疲れさせてはいけないと、分かってはいたが、腕の中にいる佳音は、本当に可憐で可愛くて……、キスを交わしているうちに、愛情が暴走し始める。


『和寿さん……』


佳音も甘い吐息とともに、何度もその名を呼んで、繰り返される和寿の愛撫に応えてくれた。



その余韻の残るベッドを抜け出して、和寿は部屋を出る。佳音を探して、キッチンを覗く。そこに佳音の姿はなく、和寿は、ダイニングから工房の作業場へと目をやった。


そこに見つけた佳音の姿。
朝日が射し込む工房の中、まばゆい光に包まれてそこに立つ佳音は、本当に天使のようだった。

佳音は和寿が起きてきたことに気づくことなく、マネキンに着せたドレスを、じっと見つめ続けている。それは、今佳音が手がけているものではなく、昨日和寿が携えてきた幸世のウェディングドレスだった。



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