恋は死なない。
和寿は、申し訳なさそうな顔をしている佳音の顔をじっと見つめた。こんなにも可憐で、守ってあげたくなるような相貌をしているのに、佳音はずっと一人で生きてきただけあって、しっかりとした芯が一本通っていた。
でも、そんなところも、和寿が惹かれたところだ。佳音のその芯の通った強さは、和寿に大切なことを気づかせてくれた。
「うん、分かってる。君の仕事の邪魔はしないし、君がドレスを作ってるところを見るのは久しぶりだから、楽しみだよ」
和寿がにっこり笑って応えると、佳音も安心したように息を抜いた。
「それじゃ、朝ごはん食べて、工房を開ける準備をしないと」
「僕が朝ごはん作るから、妊婦さんはできるまで、座って待ってて」
和寿はそう言うと抱擁を解き、軽快にキッチンへと向かった。佳音はキッチンに立つ和寿の姿をじっと目を細めて見つめて、それからダイニングの椅子に座ることなく、また幸世のドレスへと向き直った。
その佳音の後ろ姿を、和寿はキッチンから見やった。佳音は何も語らないけれども、その心の中に抱えるものを感じ取って、和寿の心にもかすかな憂いが立ち込めてくる。
けれども、和寿がそれを佳音に指摘することはないまま、朝食を済ませ、簡単な掃除をして工房を開け、佳音はドレス作りの作業を始めた。