恋は死なない。
「あさって、このドレスの依頼主が仮縫いの試着に来るから、急いで仕上げないと」
佳音は、幸世のドレスと同じ行程を繰り返して、今日もコツコツと作業を積み重ねていた。
そして、和寿は、幸世のドレスが出来上がっていく過程を眺めていたときと同じく、ダイニングの椅子に座って、佳音がひたすらに手を動かすのを見守った。
佳音の意識から和寿もいなくなり、時間を忘れて作業に没頭していく。和寿も切ない胸の鼓動を伴いながら、愛しい人が仕事に打ち込む真剣な表情を、時間を忘れて見つめ続けた。
工房を開けていても、飛び込みのお客さんが来ることはほとんどなく、ただこうやって一日が過ぎていく。
和寿は午後から小一時間ほど買い物に出かけたが、それ以外はずっと佳音が作業をする様子を、飽きもせず眺めていた。
「……僕も早く、仕事見つけないとな」
和寿がそう言いだしたのは、二人で夕食を囲んでいる時だった。
「仕事……?」
和寿が作ってくれた筑前煮を食べていた佳音は、箸を止めて目をあげた。
「そりゃ、こうやって君が食べてくれる食事を作って、君がそこでドレスを作ってるのをずっと眺めていたいけど、そうはしていられないだろう?子どもも生まれるし、君の細腕に子どもと僕とまでぶらさがれないよ」