恋は死なない。
確かに、和寿の言うとおりだった。佳音がいくら仕事を増やしても、それをこなせる量には限界がある。子ども一人を育てるのも難しいと思っていたくらいだった。
「仕事って、どんな仕事?どうやって探すの?」
「うん、ハローワークに行くとか、転職サイトに登録するとか、いろいろ方法はあるよ。仕事は、今までのキャリアを活かせたらいいんだけど……」
「キャリア……」
つぶやいた佳音は、なんとも言えない複雑な顔をした。
和寿は佳音と生きていくために、今まで積み上げてきたものをすべて捨ててしまった。それだけ、自分のことを愛してくれているからだと分かっているけれども、それを考えるたびに、佳音は身につまされるような思いがした。
「じゃあ、今までと同じような仕事をするの?」
「さあ、そううまい条件の仕事が見つかるとは思えないけど、とにかく働かないと」
佳音の中にある不安を払拭するように、和寿は笑って見せたが、佳音はその内にあるものを飲み込むように唇を噛んだ。
――前に語ってくれた、あの“夢”はどうなったの?
そんな思いが佳音の中によぎったが、言葉にして投げかけることはできなかった。
「でも、少しばかり蓄えもあるし、もうしばらくはこうやって君の側にいるよ。やっと君と一緒になれたんだ。今はまだ片時も離れていたくないよ」