恋は死なない。
そう言いながら、和寿の笑みが優しさを帯びる。それは、ずっと佳音が見たかった和寿の笑顔。
以前は、和寿の寂しさが漂う作った笑顔を見るたび、佳音の心も苦しくなっていたが、目の前にあるそれは佳音のすべてを包み込んでくれて、佳音の胸にも和寿への愛しさが溢れてくる。
だからこそ、この笑顔を虚しくしたくない。和寿にも自分といることで、幸せになってほしかった。
それから、和寿はその言葉に違わず、ずっと佳音の側にいてくれた。
仮縫いの試着に来た依頼主も、突然現れてお茶を出してくれた和寿に、驚いた顔をする。
「……私の、『夫』なんです」
恥ずかしそうに佳音が和寿を紹介すると、和寿は、その“夫”という響きに、湧き出てくる笑みを噛み殺しながら頭を下げた。
「いつも、『妻』がお世話になっています」
その響きを聞いて、佳音も胸がキュンとする。自分が誰かの“妻”になるなんて、想像したことさえなかった。
佳音が仕事をしている間も、目が合うたびに和寿は優しく微笑んでくれて、何度も和寿を想って涙を流した分、佳音は言い表せないほどの幸せを感じた。
夜は佳音の小さなベッドに、二人は体を寄せ合って眠った。
部屋を暗くして眠りに就くまでの時間、佳音を抱き寄せながら、和寿が言った。
「そのうちに、布団をもう一組買うかな」
和寿の腕の中から、佳音が頭をもたげる。